長年にわたり種々やってみたり、あるいは、やってきたことを主体に、今回ここに大勢の関係者によってまとめられたことは、いまこれを読んで、大変な労作だと思う。

故豊田喜一郎元社長の名言、こういう総合工業、自動車の組立作業は各部品が−”Just In Time ”−にライン側に集まるのが一番よい。

このごくわかりきったことが、やるとなるといろいろな問題にぶつかってなかなかできない。
理想はそうだろうがとか、現実離れをした理想だといってしまえばそれまでである。
しかし、合理化の“理”は理想の“理”だとすれば、合理化に取組むものにとっては、何が何でも実現、ないしはどこまで近づけるかに挑戦すべきであろう。

シャストインタイムと生産性、あるいは原価、あるいは外注メーカーへのしわよせなど、常識から行って矛盾する面ばかりのように思われる。
この常識の壁を破る、今時の言葉で言えば“脱常識”によって相矛盾する点を両立させねばならぬ。

“Just.In.Time”を現場的に翻訳したのが「ほしいものを、要る時に、要るだけ、取りに行く(要る部署が)」である。
後工程が前工程に取りに行く、外注品はメーカーが納入という形なので、納入品の数量と日時を指示する。

これがトヨタ生産方式の基本的考え方であり、この考え方をいろいろな形で発展し具体化したものである。

前工程として、これに対応する生産をもっとも経済的におこなわなければならない。
とかく前工程(製造現場)は、質、量、コストを個々に考えやすい。
質のためには、あるいは量を確保するためには、コストをやかましくいわれれば、しかもその中でも特に量に重点が置かれがちである。
質、量、コストの3つを調和する技術、わたくしは昔これを“現場技術”といった。
ある人はこれを“製造技術”ともいう。
最近ある席上で“トヨタ式IE”称してMIE(もうけるIE)ともいった。
名称はとにかく、この方式は従来の一般通念(常識)とはかけ離れたところもあるため、中途半端はかえって逆効果が出やすいので、徹底的にやらなければならない。
また、頭の切替えも必要である。
物の考え方、見方を変えねばならぬ。

およそ手品魔術には種(たね)があるように、この現場技術にも種がある。
種明かしすれば“ムダを排除−徹底的に−である”“ムダを排除するにはムダを見付ける目を養う、見付け得たムダの排除の仕方を考える”この繰返しである。

いつまでも、どこまでも、うまずたゆまず。