第3章標準作業

第1節標準作業

1−1標準作業について

われわれは設備、機械の配置、加工方法の検討を、自働化のくふう、冶工具の改良、搬送方法の検討や仕掛品手持ちの適正化などにより、ムダの徹底的排除をおこない、また、ポカヨケによる不良の再発防止などに現場の知恵を加え、効率の良い生産をするために努力精励している。

現場は効率よく生産を上げるためのよりどころとなり、さらに改善の土台となるものが必要となる。それが標準作業となっている。

標準作業では、効率的な生産を遂行するための諸条件を考慮して、物と機械と人を、もっとも有効に組み合わせることが必要である。

当社では、この組み合わせの過程を「作業の組み合わせ」と呼んでおり、この組み合わせの集約された結果が標準作業である。

標準作業は、標準作業票として工場の各作業現場の見やすいところに提示され、新しい作業者が初めて作業をする場合の指導書となる。また、古い作業者がその作業に慣れて、標準外れの作業をしないような歯止めともなる。さらに標準作業票に基づいて作業をするときの不具合点が次の改善の芽となり、新しい標準作業票をや作業指導書がつくられるのである。

一方、管理者は指導書や標準作業票が掲示されているので、作業者が正しい作業をしているかいないか、あるいは、作業指導書に不備があるかどうか、そういうことが一目でわかるようになっている。

標準作業を守るということは品質を保証し、量・コストをも決定していると言えよう。しかしながら、標準作業は一度決定したら、安心したり放置しておいてはいけない。

標準作業は常に生きており、改善の余地をたくさん含んでいるものである。完全無欠だと思っては進歩はなく、トヨタの創造精神にも反するのである。

1−2 標準作業と作業標準

標準作業は、作業標準と同一視されやすいが、標準作業と作業標準とは別個のものである。

作業標準とは、標準作業をおこなうための諸標準のことをいう。

たとえば、熱処理のときの材質に対する処理温度・時間・冷却液の種類・その他、また、機械加工のときのカッターやバイトの形式・形状・材質・寸法・切削条件、切削油・その他 必要品質を造りだすために、作業上の経済的な条件を標準として決めたものである。これが作業標準である。

これに対し、標準作業は、製品を造るための標準であることは同様であるが、サイクルタイム・作業順序・標準手持ちの3つが 何一つ抜けていても成りたたないのである。安全に、良い製品を、安く造るためには、標準作業にしたがわねばならぬことはもちろんのことである。このサイクルタイムがはいっているところが、標準作業の大きな特長であり、作業標準と異なる点でもある。

当社の標準作業の他の一つの特長は次のことである。すなわち、一般に他社では標準作業は第3者である技術員が、IE手法を用いて作業測定しその結果に基づき作成しているようである。しかし、当社では主として組長自身が作成していることである。

すなわち、標準であると組長が自ら決めたものが標準となり、作業者に指導し守らせるのである。

もちろん 標準作業は組長が適正な速さで、作業者に対してやってみせることができねばならない。そして、その速さは第3者が確かに適正な速さである、と認められるものでなければならない。

この標準作業は、生産するために必要なものの数量・それを造るための機械や人などを、経済的に組み合わせることによって決まってくるのである。

1−3 標準作業と監督者

監督者は、常に現場作業者に対して「標準作業は、守らねばならないものである」という雰囲気づくりに努力しなければならない。

標準作業を守らせることは、監督者の仕事であるから、標準作業を絶対に守るということが、目標とする品質を満足し、しかも、安価な製品を安全に生産することにつながることを、部下作業者に理解させねばならない。

監督者は、自分に責任をまかされた現場の工程を、もっともよく知っていて標準作業を作成するのてあるから、当然、自分自身がやれることが必要であるし、自分の部下に、作業をこのようにやらせるのだ、という意志を含んだものてあることが大切である。

そして、標準作業が徹底しておこなわれているか、やりにくい点はないかなど悪い条件を調査し、十分見きわめる必要がある。

標準作業は生きていて、常に未完成であり、いつも作りかえられる課題を持っているものである。標準作業を定める監督者も、それを遵守する一般作業者も、お互いに進歩向上させていくために、常に作業改善を心がけ、その改善に基づき、標準作業の改訂を繰り返していくことが大切である。

改訂がおこなわれていない標準作業票が、いつまでもぷらさがっている職場の監督者は、改善に対して「無能者」である、と自分から証明するようなものであろう。

監督者が、しばしば標準作業を部下が守ってくれないとぐちを言っているが、部下に守らせるためには、標準作業を作成するときに、現場でその作業を一番よく知っている作業者を参画させたり、意見を聞いてやるのも大切なことである。

こうすることによって、自分たちで作った標準作業だ、という意識を高めるのも一つの方策である。

いずれにしても、標準作業の実施は、標準作業を守ることであり、改善は標準作業を改訂することである。
標準作業が守られていれば、もし作業結果に異常があったとき、原因の追求が容易にでき、また、改善の手がかりや問題点の所在を知ることができる。

監督者は、品質を左右するものの要因の一つとして、標準作業があることをけっして忘れてはならないのである。
なお、この章で例としてあげたいろいろな標準書類の様式は、本社工場で用いているものを中心としてとりあげた。各工場によって多少違いはあるようである。しかし、基本的には共通だと思う。各工場、各部に適した様式の標準書を活用すればよいのである。